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幸運のFAX

上京したころ。私の部屋には一台のパソコンが、ポツンとあるだけだった。ほかの家電は一切ない。家具もない。カーテンもない。食器もない。クソ狭い5畳の部屋が広くみえた。お金がまったくなかったので、何から買い揃えていくか途方にくれていたのだ。

「引越し祝いとして、FAXあげようか?」

梶原もじゃが連絡をくれた。やはり、もつべきものは友であり、先輩である。ライターにとってFAXは必須なので、大変ありがたい。さっそく電車に乗って、梶原邸にむかった。

「はい、これ」

渡されたFAXはなぜかホコリをかぶっていた。なんとなく、生ゴミ臭い。ところどころガムテープで補修してある。さらにデッかい文字の張り紙が貼ってあった。

これは有料粗大ゴミです! 一般ゴミに捨てないでください!

梶原センセ、私は引越し祝いをもらいに来たんです。ゴミを回収しにきたんじゃないんですけど……。

それでも電話が使えるし、送受信機能も生きているというので、もらって帰った。モジュラージャックにコードを突っ込んだときは、恥ずかしいかなドキドキした。そして自分に「家電が増えて嬉しい」という家庭的な感情があるのに気づき、ビックリしたのを覚えている。

060630_18500001ゴミ捨て場から奇跡の復活を遂げただけに、前々から調子は悪かった。5枚の原稿を突っ込んだら、5枚とも一気にスキャンするお茶目なヤツだった。

6月29日、ついに本格的にガタがきた。受信はできるのだが、まったく送信できないのだ。本体裏のシールを確認すると、製造年月日96年7月と書かれてあった。享年9歳。10歳の誕生日の目前で逝ってしまった。

ちなみにこのFAX、初代の持ち主は須田鷹雄氏である。製造年月日から推測すると、JR東日本を退職して、ドラゴンプレスを立ち上げたときに購入した代物ではないだろうか(いまだに送信すると、『送信元:ドラゴンプレス』と記載される)。

それを、梶原が須田鷹雄商店を退社してフリーになるときに、退職金がわりに貰ってきたそうな。そして私は上京祝いに、このFAXを貰った。

3人の門出をみてきたFAX。私はおいておくとして、初代&二代目の持ち主は競馬関係の仕事で成功を収めているだけに、幸運のFAXなのかもしれない。

近々ゴミに出す予定なのだが、「幸運のFAX」なんて思ってしまうと、捨てきれなかったりもする。電話しか使えないが、ほしい人がいたらぜひ差し上げたい。できれば、何か新しいスタートを切る人に。

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コメント

新しい生活……じゃ、オレやな(笑)。

投稿: 梶原もじゃ | 2006年6月30日 (金) 21時49分

シャケが生まれた川に帰るようなモノです。

投稿: 姫園 | 2006年7月 1日 (土) 00時48分

す、すばらしいコメント(笑)
何事も見逃してはいけないという
見本やね。

投稿: めじ | 2006年7月 3日 (月) 20時39分

>めじ様
今日、某編集者にも、シャケコメントを褒められましたw

投稿: 姫園 | 2006年7月12日 (水) 21時19分

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